重症心不全

重症心不全

severe heart failure

重症心不全治療

心不全に対しては薬物治療以外の多くの選択肢、いわゆる非薬物治療があります。代表的な非薬物治療にはペースメーカを用いた心臓再同期療法CRT(Cardiac Resynchronization Therapy)、心臓の瘢痕化した部分を切除する左室形成術などが挙げられますが、近年本邦でも左室補助人工心臓(LVAD:Left Ventricular Asist Device)や心臓移植が行われています。重症心不全患者の予後の改善には非薬物治療が重要となりますが、すべての患者様に効果が得られるとは限らないため、心不全の専門家による各治療方法の適応検討が必要となります。

重症心不全とは、心機能低下が高度で、集中治療を要するような入院を繰り返す心不全で、原因となる疾患は、拡張型心筋症や拡張相肥大型心筋症、虚血性心筋症(広範囲の心筋梗塞による心機能低下)、弁膜症、先天性心疾患、心筋炎後心筋症(急性心筋炎による心機能低下が回復しない)など、様々です。根本的治療は心臓移植(移植申請時、65歳未満が条件) ですが、日本国内での心臓移植件数はまだ少なく、重症心不全患者さんの数と比べると到底足りず、移植を受けるまでに、3年以上の待機が必要です。重症心不全患者さんが心臓移植の順番がくるまで待機することは困難であり、その長期サポートのために機械補助であるLVADが用いられます。

LVADは、著しく低下した心機能を補助するため、自分自身の心臓に装着する機械です。LVADには、体外設置型(体外式)と植込型があります。

体外式LVADは、臓器障害を伴うような急激な心不全増悪に対して、救命の目的で速やかに導入することが可能です。しかし、駆動装置が大きいために装着した状態では自宅への退院ができない点や、ポンプの中に血栓ができやすく血栓症を起こしやすい等、合併症のリスクが高いという欠点があります。そのため、装着後はLVADからの離脱に向けて薬物治療の強化を行う、もしくは心臓移植の適応が取得可能な場合は適応取得後に後述する植込型補助人工心臓への切り替えを目指します。

一方、植込型LVADは小型化されており、細いケーブルが体外に出ているものの、ポンプ自体は体内に植え込みます。体外式LVADと比べて血栓症のリスクが低く、装着したままでも自宅退院が可能であるという利点があります。植込型LVADによる治療を受けるためには日本循環器学会 心臓移植適応検討委員会から心臓移植の適応を取得していることが条件となります。心臓移植適応の取得には、65歳未満で、重度の腎機能障害・肝機能障害がない、家族から十分なサポート体制が得られる等のいくつかの条件を満たす必要があります。また、心臓カテーテル検査を含めた多くの事前検査が必要となるため、状態が非常に悪化する前に準備を始めることが望まれます。当院は植込み型LVADの実施認定施設であり、これまで8例に植込み型LVAD装着術を施行し、2019年12月まで2例に移植実施施設で心臓移植を行われ軽快退院となりました。心不全には多くの治療の選択肢があります。心不全診療に難渋されている患者さんを是非、当院までご相談ください。心不全診療の専門家がそれぞれの患者さんに対する最良の治療針を検討いたします。また、いかなる治療にも抵抗性の重症心不全においては心臓移植の適応を検討いたします。緊急を要する患者さんに関してもご相談ください。