循環器内科第一部(虚血部門)では、主に下記疾患に対し、カテーテルを用いた低侵襲(身体への負担が少ない)治療を行っています。
また、緊急を要する急性冠症候群等に対しては、24時間on call体制で治療にあたっています。
1.虚血性心疾患(急性心筋梗塞・狭心症)
経皮的冠動脈形成術 (PCI: Percutaneous Coronary Intervention)
1987年に第一例を施行し、2014年12月4日に10,000例に達しました。2024年3月現在までに14,300例を施行しています。ほとんどの症例で橈骨動脈(手首)、遠位橈骨動脈(親指の付け根)からの治療を行っており、術直後から歩行可能です。また、古典的なバルーン、ステントによる治療に加え、施設認定が必要なロータブレーター、エキシマレーザー等、国内で認可されているすべての器具の使用が可能です。これにより、あらゆる病変に対応できます。
2.閉塞性動脈硬化症
末梢動脈に対するカテーテル治療(EVT: EndoVascular Treatment)
腸骨動脈~下肢動脈の動脈硬化による狭窄病変に対するカテーテル治療のほか、腎動脈狭窄、大動脈狭窄に対してのカテーテル治療も行っています。また当院は、浅大腿動脈ステントグラフトの認可施設でもあり、その他日本で認可されているすべての器具の使用が可能です。
3.大動脈瘤/大動脈解離
ステントグラフト内挿術(EVAR: Endovascular Aortic Repair / TEVAR: Thoracic Endovascular Aortic Repair)
腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤、大動脈解離に対してのステントグラフトを用いた血管内治療を行っています。2009年7月から開始した腹部ステントグラフト内挿術は2024年3月現在、815例に達しています。なお、当院では大腿動脈からステントグラフトを挿入する際、メスによる切開はせず、止血デバイスを使用した完全穿刺法を実施しています。これにより、鼠径部の3mm程度の創傷で治療を行うことが可能です。
4.構造的心疾患(SHD:Structural Heart Disease)
経カテーテル大動脈弁置換術 (TAVR: Transcatheter Aortic Valve Replacement / TAVI: Transcatheter Aortic Valve Implantation)
大動脈弁狭窄症に対し、カテーテルを用いて治療する大動脈弁置換術です。2014年12月から2024年3月現在に至るまで、680例に達しています。多職種から形成されたチームで行い、従来の開胸による外科的大動脈弁置換術が困難な患者様に対しても施行可能な新しい治療法です。
経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip®)
重症の僧帽弁閉鎖不全症を抱え、外科手術が困難とされた方に対する新しい治療法です。大腿部の静脈からカテーテルを挿入することで、心臓内の僧帽弁を修復します。このため、胸を切開することがなく、従来の外科的弁置換術のように心臓を停止させる必要もない(人工心肺を使用しない)ことから、患者さんの身体への負担が少ないのが特徴です。高齢者や心臓以外の合併症があり外科手術が行えないような患者さんにも施行でき、重症心不全の治療として有効な治療法の一つです。2021年9月の開始から現在まで、県内で唯一の施行認定施設です。
心房中隔欠損症、卵円孔開存症、動脈管開存症に対するカテーテル閉鎖術
開胸を必要とせず、カテーテルを太ももの付け根の静脈(大腿静脈)から挿入し、心臓まで閉鎖栓を運び治療を行う低侵襲な治療法です。成人に対する治療では、県内で唯一当センターでのみ実施可能です。
5.その他のカテーテル治療
- 下大静脈フィルター挿入
- 内臓動脈に対するカテーテル治療(拡張術、コイル塞栓術等)
令和5年度治療実績
治療内容 | 件数 |
---|---|
血管造影検査、カテーテルインターベンション総数 | 2,226例 |
冠動脈造影検査(CAG) | 1,151例 |
経皮的冠動脈形成術(PCI) | 660例 |
経皮的末梢血管形成術(EVT) | 98例 |
腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術(EVAR) | 48例 |
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR) | 134例 |
経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip) | 13例 |
胸部大動脈瘤ステントグラフト内挿術(TEVAR) (心臓外科共同) | 32例 |
先天性心疾患に対するカテーテル治療(心房中隔欠損閉鎖術/動脈管閉鎖術) | 17例 |
その他のカテーテル治療(コイル塞栓術、異物除去、IVCフィルター等) | 73例 |