虚血部門

虚血部門

Ischemic department

循環器内科第一部(虚血部門)では、主に下記の虚血性疾患に対し、カテーテルを用いた低侵襲(身体への負担が少ない)な治療を行っています。
また、緊急を要する急性冠症候群などには、24時間on call体制で治療にあたります。

1.虚血性心疾患(急性心筋梗塞・狭心症)

経皮的冠動脈形成術 (PCI: Percutaneous Coronary Intervention)

1987年に第一例を施行し、2014年12月4日に10,000例に達しました。2025年4月現在までに15,000例を施行しています。当院では、ほとんどの症例で橈骨動脈(手首)、遠位橈骨動脈(親指の付け根)からの治療を行っています。これにより、施術直後から歩行が可能です。また、古典的なバルーンやステントによる治療に加え、ロータブレーターやエキシマレーザー等、国内で認可されているすべての器具の使用が可能なため、あらゆる病変に対応できます。

2.閉塞性動脈硬化症

末梢動脈に対するカテーテル治療(EVT: EndoVascular Treatment)

腸骨動脈~下肢動脈の動脈硬化による狭窄病変に対するカテーテル治療のほか、腎動脈狭窄、大動脈狭窄に対するカテーテル治療も行っています。また当院は、浅大腿動脈ステントグラフトの認可施設であり、その他日本で認可されているすべての器具の使用が可能です。

3.大動脈瘤/大動脈解離

ステントグラフト内挿術(EVAR: Endovascular Aortic Repair / TEVAR: Thoracic Endovascular Aortic Repair)

腹部や胸部の大動脈瘤、大動脈解離に対し、ステントグラフトを用いた血管内治療を行っています。腹部への施術件数は、2009年7月から2025年4月までに、860例に達しています。当院の虚血部門では、大腿動脈からの施術にあたって止血デバイスを使用した完全穿刺法を実施しています。メスによる切開を行わないため、鼠径部の3mm程度の創傷で治療が可能です。

4.構造的心疾患(SHD:Structural Heart Disease)

経カテーテル大動脈弁置換術 (TAVR: Transcatheter Aortic Valve Replacement / TAVI: Transcatheter Aortic Valve Implantation)

大動脈弁狭窄症に対し、カテーテルを用いて治療する大動脈弁置換術です。2014年12月から2025年4月現在に至るまで、790例に達しています。開胸による外科手術が困難な方に対しても施行可能です。また当院では、多職種から形成されたチームで施術を行っています。

経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip®)

重症の僧帽弁閉鎖不全症を抱え、外科手術が困難とされた方に対する新しい治療法です。大腿部の静脈からカテーテルを挿入し、心臓内の僧帽弁を修復します。従来の手術と異なり、胸を切開したり、人工心肺を使用する必要がありません。そのため、患者さんの身体への負担を抑えることが可能です。また、心臓以外の合併症があり外科手術が行えない方にも施行できます。2021年9月の開始から現在まで、県内では唯一の施行認定施設です。

経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC: Percutaneous Transvenous Mitral Commissurotomy

僧帽弁狭窄症に対するカテーテル治療です。
リウマチ性(小児期にリウマチ熱に罹患)の僧帽弁狭窄症で、僧帽弁の石灰化が少ない例が適応になります。胸を切開することなく大腿部の静脈からカテーテルを挿入して心房中隔穿刺により僧帽弁に到達し、イノウエバルーンを拡張することにより、狭窄をきたした僧帽弁を広げる治療法で、当院では1990年から施行しています。
近年はリウマチ熱が少なくなったことにより適応症例数は限られていますが、現在も適応症例に対しては積極的に施行しています。

心房中隔欠損症、卵円孔開存症、動脈管開存症に対するカテーテル閉鎖術

カテーテルを太ももの付け根の静脈から挿入し、心臓まで閉鎖栓を運ぶ治療法です。開胸を必要としないため、患者さんの身体への負担が少なく済みます。成人に対する治療では、県内で唯一、当院が実施可能です。

経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA: Percutaneous Transluminal Septal Myocardial Ablation)

閉塞性肥大型心筋症に対するカテーテル治療です。
閉塞性肥大型心筋症では、左室の出口(流出路)の心筋が肥厚し、左心室から大動脈に血液がうまく流出できないことで心臓に負荷がかかり、体に十分な血液が行き渡らない状態になります。そこで、左室流出路閉塞の原因となっている中隔心筋を灌流する冠動脈の分枝(中隔枝)に対して、カテーテルを用いて少量の純エタノールを注入し、閉塞中隔心筋を完全な壊死状態にさせることにより、肥厚心筋の壁厚減少と流出路の拡大を得る治療法です。当院では2002年から、薬物療法にて十分な効果が得られない症例に対して施行しています。

5.その他のカテーテル治療

  1. 下大静脈フィルター挿入
  2. 内臓動脈に対するカテーテル治療(拡張術、コイル塞栓術等)

令和6年度虚血部門実績

治療内容 件数
血管造影検査、カテーテルインターベンション総数2,218例
冠動脈造影検査 (CAG)1,152例
経皮的冠動脈形成術 (PCI)656例
経皮的末梢血管形成術 (EVT)89例
腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術 (EVAR)37例
経カテーテル的大動脈弁置換術 (TAVR)146例
経皮的僧帽弁接合不全修復術 (MitraClip)18例
胸部大動脈瘤ステントグラフト内挿術(TEVAR) (心臓外科共同)23例
先天性心疾患に対するカテーテル治療(心房中隔欠損閉鎖術/動脈管閉鎖術)22例
その他のカテーテル治療(コイル塞栓術、異物除去、IVCフィルター等)75例