担当医師:山下 英治 循環器内科第三部長 (平成11年 自治医科大学卒)
経胸壁・血管エコー検査・経食道心エコー検査
通常の経胸壁心エコー・血管エコー検査は生理検査課の検査技師が担当し、年間10,000件を超える経胸壁心エコー検査および年間1,200件を超える血管エコー検査を実施しています。
心エコー部門では、医師主導の下、主に経食道心エコー検査、ドブタミン等の薬剤を用いた負荷心エコー検査などを実施しています。
ドブタミン負荷心エコー検査は低流量重症大動脈弁狭窄症の手術適応の判断に有効であり、当院では安全かつ積極的に実施しています。
経食道心エコー検査とは
- 胃カメラよりやや太め(幅16mm・厚さ12mm)のプローブ(管)の尖端に超音波のセンサーが付いており、これを用いて心臓の画像を描出します。
- 当院では咽頭麻酔+静脈麻酔(全身麻酔)を使用するため胃カメラが苦手な患者さんでも最小限の苦痛で検査可能です。(検査時間10-30分)
- 食道は直接心臓に接しているため、経胸壁からの心臓超音波検査より更に明瞭な画像が得られます。
- 不整脈治療(心房細動アブレーション)前の血栓評価ならびに弁膜症・成人先天性心疾患の手術適応評価・術式決定の為の精密検査等に用いられます。
- 開心手術や経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の術中モニタリング等にも用いられます。
- 当院では患者の苦痛低減の為、全例静脈麻酔(プロポフォール)を用いて検査を行います。
当院の経食道心エコー検査数
年度 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
TEE件数 | 885 | 1,002 | 921 | 1,035 | 1,127 | 1,183 | 1,079 | 1,130 |
弁膜症外来
心エコー部門の強みを生かし、弁膜症患者の手術適応評価および術後経過観察のための弁膜症外来を開設しています。
経胸壁心エコー検査での評価を基に、経食道心エコー検査・負荷心エコー検査・CT・MRI・心肺運動負荷試験等のデータを併せ、患者の治療方針を決定しています。当院はTAVR/TAVIの認定施設であり治療適応患者を積極的に受け入れています。
(http://j-tavr.com/facility.html)
判断が難しい症例では、循環器内科・心臓血管外科・麻酔科その他スタッフを交えたハートチームカンファランスで治療方針の検討を行っています。弁膜症外来は火曜日午後の開設かつ予約制です。受診希望の方はあらかじめ病院に電話でお問い合わせください。
成人先天性心疾患外来
近年の医療レベル向上に伴い、複雑心奇形の生存率が著しく向上し、これらの患者さんが成人に達し社会生活を営むケースが増えてきました。これに伴い、成人に達した先天性心疾患患者が増加し、18歳未満の先天性心疾患患者の数を凌駕しています。
これらの患者さんの受け皿として、群馬県立心臓血管センターと群馬県立小児医療センターが連携し、平成24年4月、群馬県初の成人先天性心疾患外来を立ち上げました。
現在当院では、地域の診療所や病院でフォローされている患者さんのうち、カテーテル治療適応となるが未治療の患者さん(心房中隔欠損・動脈管開存症など)、小児期に手術を受けた後、再手術が必要な患者さん(ファロー四徴症など)、成人期に手術が必要な可能性がある患者さん(修正大血管転位・エブスタイン奇形・先天性弁膜症など)、小児科で先天性心疾患の治療を受け、成人の循環器内科に移行した患者さんなどの受け入れを行っています。
これらの患者さんに対し、定期的な検査や薬剤治療を行う他、再手術や心疾患以外の手術が必要な場合の心臓の状態管理を行います。再手術症例や複雑な症例では、当院スタッフの他、群馬県立小児医療センターを交えた合同カンファランスを行い、手術・治療方針を決定しています。また当施設で対応が困難な場合は、適切な専門医療機関への紹介も行います。
第二・第四金曜日の午後に外来診療を行っております。予約制ですので、受診希望の方はあらかじめ病院に電話でお問い合わせください。
成人先天性心疾患外来スタッフ
2019年4月以降、当院は日本成人先天性心疾患学会から成人先天性心疾患専門医連携修練施設に認定されています。(http://www.jsachd.org/specialist/list-facility.html)
本制度は成人先天性心疾患を診療可能な専門医の育成を目的とし、成人先天性心疾患診療の実績を有する施設が認定されています。専門医育成にあたっては、成人先天性心疾患への専門性を有する当院と、小児科・産婦人科・精神科など包括的な診療が可能な総合修練施設とが連携し、診療や育成を行うことになります。
(http://www.jsachd.org/specialist/doc/ACHDlist-2019.pdf)
経皮的心房中隔欠損閉鎖術・経皮的動脈管開存閉鎖術
心房中隔欠損(ASD)ならびに動脈管開存症(PDA)は頻度の高い先天性心疾患であり、通常は小児期に治療されることが多いです。しかし、成人期に発見されることも多く、心不全や不整脈の原因になることが知られています。近年、これらの疾患に対するカテーテル治療が普及してきています。開胸せずに施行でき、患者様の負担が軽減されることから、群馬県内でも成人ASD/PDA患者のカテーテル治療が可能な施設が望まれていました。
2019年当院は、小児循環器領域のカテーテル治療の学会であるJPICと成人循環器領域のカテーテル治療の学会であるCVITにおいて、経皮的ASD閉鎖術施行施設・経皮的PDA閉鎖術施行施設に認定されました。
(http://www.jpic-meeting.org/cathe/asd/inst2018.shtml)
(http://www.jpic-meeting.org/cathe/pda/inst2018.shtml)
ASDに対しては、Amplatzer Septal Occluder(ASO)およびFigulla Flex-Ⅱ(FF-Ⅱ)の2種類の閉鎖栓を、PDAに対してはAmplatzer Duct Occluderを用いて手術を施行、現在全例合併症なく成功しております。問題がなければ入院期間は3泊4日です。
今後も安全かつ患者様の負担の軽い手術・治療に取り組んでいきます。
当院の成人先天性心疾患外来受診者数(延べ人数)
年度 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
ACHD患者 | 27 | 75 | 113 | 144 | 143 | 252 | 307 |
当院の成人先天性心疾患患者疾患一覧 (2017年12月現在)
心室中隔欠損症・心房中隔欠損症(部分肺静脈還流異常)・動脈管開存症・房室中隔欠損症・ファロー四徴症・修正大血管転位症・肺動脈弁狭窄症・完全大血管転位症術後・ロス手術後・総動脈幹症術後・単心室(フォンタン手術後・グレン手術後・BTシャント術後・TCPC術後)・両大血管右室起始症・純型肺動脈閉鎖術後・大動脈縮窄症術後・エブスタイン病・総肺静脈還流異常症術後・先天性弁膜症(大動脈弁二尖弁・弁上狭窄・弁下狭窄他・Shone複合等)
臨床研究
心エコー部門は臨床を踏まえた研究発表も盛んに行っています。現在も大動脈弁狭窄症の多施設共同研究、成人先天性心疾患罹患率や経食道エコー検査による診断精度の向上に関する研究、心房細動の血栓リスク層別化に関する研究等、各種研究を進めています。